傷のない背中が誇らしいものだと思っていた。
それは決して敵に背中を見せなかった、敵に後ろを取られなかった、敵から逃げなかったことの証だからだ。
敵よりも強い。
味方の誰よりも前に。
そして、負けることのなかった、証明。

今、それは、間違いではないものの、決して正しいものでもない、それを知った。

抱き合う度に触るあなたの背は傷だらけで、深いもの、浅いもの、たくさんあった。
剣のもの、斧で抉られたもの、矢を受けた深い穴、鋭利なナイフの筋は肌の下に薄い白い帯を引いたようだ。
あなたは敵から逃げる人ではない。
まして、決して弱くもない。
では何故、こんなにも多くの傷があるのか?
こんなにも多くの種類の傷がつくのか?
あなたはそれを語らない。
いや、記憶がない。
僕も、ない。
でも、背の傷に対しての考えは肌に染み付いていたものだ。
思い出そうとしたものではない。
兵士としてのサガだ。矜持であり、そして思い込みと自惚れだ。
現実的に行ってきた成果でもあるだろう。だから、忘れていなかったんだろう。
あなたの、背が、それと同じだとするならば、僕とあなたは全くの反対の道を歩んできたのだと、わかる。
あなたの背の傷は、逃げたのではない。
後ろを取られたのではない。
あなたは守ったのだ。
盲目に前に戦うのではなく、戦いつつも引き、計り、そして愛するものや誰かを、守るために背を向けたのだ。

背に腕を回し、指先に当る引き攣った皮膚の筋。
それを刻まれることになった理由の、誰かが、たまらなく憎いと思った。
同じくらいに羨ましく、そして―――いとおしいと思った。
僕の…今では僕のものであるフリオニールを、作ったもののひとつなのだ、と。